「あの店、敷居が高くて入りにくいよね」という会話、聞いたことがありますか?実は、その表現は誤用なのです。
「敷居が高い」とは、高級すぎて入りにくいという意味ではありません。
この記事では、多くの人が誤解している「敷居が高い」の本来の意味を解説し、正しい使い方を紹介します。読み進めていただければ、この言葉をより深く理解し、適切に使えるようになります。
正しい日本語の使い方を学び、語彙力をアップさせたい方は、ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。
「敷居が高い」とは、相手に不義理などをしてしまい、行きにくいこと
「敷居が高い」という表現は、本来、不義理などの理由で相手の家に行きづらいことを意味します。例えば、「数年ぶりに伯母に会うのは気が引けて、その家に行くのは躊躇してしまう」という状況で使用されます。読み方は「しきいがたかい」です。
ビジネスの場でも、「最近の〇〇社でのプレゼンがあまり良くなかったので、敷居が高くなって訪問するのが気まずく感じる」といった形で使われることがあります。
「敷居が高い」の語源・由来
「敷居が高い」という表現の語源・由来は、日本の伝統的な家屋の構造にあります。「敷居」とは、家の門や玄関に設けられた横木のことで、門や戸を支えるための部分です。
この表現は、物理的な敷居の高さとは関係なく、心理的な敷居の高さを表現するものです。具体的には、ある家や場所に入りにくい、行きづらいと感じる状況を指します。
この感覚は、相手に対して負い目や遠慮がある場合などに使われます。たとえば、以前に迷惑をかけた相手の家を訪れる場合などに「敷居が高い」と表現します。
「敷居が高い」を高級で行きにくいと誤解している人が多い
「敷居が高い」という表現は一般的に使われていますが、多くの人がその本来の意味を誤解しています。
元々、この表現は「不義理や面目が立たないために、相手の家に行きづらい心情」を示します。
しかし、令和元年の文化庁の「国語に関する世論調査」では、「高級すぎて入りにくい」という誤解をしている人が56.4%に上ることが分かりました。
「敷居が高い」という表現は一般的に使われていますが、多くの人がその本来の意味を誤解しています。
しかし、近年では、高級すぎたり上品すぎたりして入りづらいという意味でも使われるようになってきてます。
これらの使い方は本来の意味とは異なる誤用ですが、現在では一般的に受け入れられているといえます。とはいえ、やはり本来の意味にそくした正しい使い方をしてもらいたいものです。
「敷居が高い」の誤用例
ここでは、「敷居が高い」を誤った意味で使用している例を紹介します。
代表的な誤用としては、「あの店はドレスコードがあって敷居が高い」や「料亭は敷居が高くて入りにくい」というように、高級店や格式のある場所に行くことに気後れする様子を表現するものです。
このような使い方をした経験がある人も多いのではないでしょうか。
敷居が高いの誤用を避けるための言い換え例
高級店や上品な場所に入りにくいと感じる場合、「敷居が高い」という表現の代わりに「ハードルが高い」を使うのが適切です。
「ハードルが高い」は元々「乗り越えなければならない障害が多い」という意味ですが、「あのお店はハードルが高い」といった形で使うことができます。
「敷居が高い」のビジネスシーンでの使い方
「敷居が高い」はビジネスの場でも、不義理や失礼が原因で訪問しづらい状況を表現する際に使われます。適切な状況に応じて使用しましょう。
「敷居が高くなった」の例文
以前は普通に訪問できていたのに、何かの原因で急に訪問しづらくなった状況を「敷居が高くなった」と表現し、これはビジネスシーンでもよく使われます。
・前回のプロジェクトでの失敗が原因で、あのクライアントのオフィスを訪問するのが敷居が高くなった。(正しい)
・契約更新の際に値上げを申し出たため、その後の交渉が敷居が高くなった。(誤用)
この文章は「敷居が高い」の本来の意味とは少しずれています。「敷居が高い」は、不義理や失礼などが原因で特定の場所に行きにくくなることを表しますが、この文脈では「交渉が難しくなった」などの表現が適切です。
修正例
- 契約更新の際に値上げを申し出たため、その後の交渉が難しくなった。
- 契約更新の際に値上げを申し出たため、その後の交渉がしづらくなった。
「敷居が高くて」の例文
「敷居が高くて」は訪問できない理由を述べる際に使われます。例として、「何度も訪問を促されているが、敷居が高くて訪問しづらい」や「敷居が高くてというのは、ただの言い訳だ」など、ビジネスシーンや日常会話でも使用されます。
・前の会議で厳しく叱られたので、次の会議に出席するのが敷居が高くて困っています。
・提案を何度も拒否されたので、再度訪問するのが敷居が高くて二の足を踏んでいる。
「敷居を高くする」の例文
「敷居を高くする」は自ら訪問しづらい理由を作り、訪問のハードルを上げることを意味します。
・定期的なフォローアップを怠ることで、クライアントとの関係において敷居を高くすることは避けるべきです。
・連絡を取らないことで取引先との関係が悪化し、自ら敷居を高くするような行動を取るのは賢明ではありません。
日常生活でも同様に、「普段から親戚付き合いをおろそかにして、自ら敷居を高くすることはない」のように使うことができます。
「敷居が高い」の類語・言い換え表現
「敷居が高い」という表現は、ビジネスシーンや日常会話でよく使われますが、使い方を誤ると誤解を招くこともあります。
「敷居が高い」と同じ意味を持つ類語や言い換え表現を紹介し、それぞれの使い方を解説します。これらの表現を理解することで、より適切にコミュニケーションを取ることができるでしょう。
1. 門を塞ぐ(かどをふさぐ)
「門を塞ぐ」は、「不義理をしたため、相手の家に行くのが恥ずかしい」という意味で使われる表現です。「敷居が高い」とほぼ同じ意味を持ち、特に相手に対して申し訳ない気持ちを表す際に使用されます。
- 「最近連絡を取っていなかったので、自ら門を塞ぐような状態になってしまった。」
- 「昔の失礼が原因で、彼の家に行くのは門を塞ぐような気持ちだ。」
2. 委縮する(いしゅくする)
「委縮する」は、「元気がなくなる」「気後れする」という意味があります。相手に対して申し訳ない気持ちや、訪問や行動に対するためらいを表す際に、「敷居が高い」の代わりに使うことができます。
- 「長い間連絡を取っていなかったので、委縮してしまって訪問しにくい。」
- 「前回のミスが原因で、次の会議に出席するのが委縮してしまう。」
3. 頭が上がらない(あたまがあがらない)
「頭が上がらない」は、「引け目を感じて対等に接することができない」という意味です。過去の失敗や不義理によって相手に対して申し訳ない気持ちを表現する際に、「敷居が高い」と同様に使うことができます。
- 「長い間ご無沙汰しているので、彼に対して頭が上がらない気持ちだ。」
- 「前回のプロジェクトでの失敗が原因で、彼の前では頭が上がらない。」
「敷居が高い」という表現を使う際には、その意味や使い方を正確に理解することが重要です。
今回紹介した「門を塞ぐ」「委縮する」「頭が上がらない」といった類語や言い換え表現を活用することで、より適切に自分の気持ちを伝えることができるでしょう。
これらの表現を覚えて、さまざまな場面で上手に使い分けてください。
まとめ
これまで「敷居が高い」を正しく使っていましたか?誤用していた場合は、この機会に正しい意味を理解し、正確に使えるようにしましょう。
「敷居が高い」を使う場面では、不義理や面目を失ったことが原因で、気後れしているという感情が前提となります。この基本を押さえて、ビジネスシーンでも活用していきましょう。
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