役不足とは、
「①俳優などが自分に割り当てられた役に対して不満を抱くこと。②その人の力量に比べて役目が軽すぎる」ということです。
人の能力や仕事の軽重などに関わる文脈で使われるのですが、本来の使い方と違う文脈で使われることが多いことばとしても有名です。
「自分には役目が重すぎるから」と、自分を謙遜する意味で使ってしまうのです。
が、これは本来の使い方から外れた使い方です。
謙遜する意味をあらわしたいのであれば、役不足の対義語を使わないといけません。
役不足の対義語や類語、また、使い方の例もご紹介しますので、この機会にぜひご確認してみてください。
役不足の対義語
考えると結構ありますよ。
- 力不足
- 実力不足
- 能力不足
- 荷が重い
- 大役すぎる
- 分不相応
などあります。
「対義語」を辞書で調べると、
「意味が正反対の関係にある語。また、対をなしている語。「長い」と「短い」、「白」と「黒」「赤」などの類。」となっています。
ですから、「与えられた役目や仕事が重すぎる」ということをいいたければ、役不足の対義語を使えばよいのです。
役不足の対義語を使った例
「その仕事は彼には役不足ですよ」
という会話があったとき、
いいたいことは、
「その程度の仕事を彼にさせるのはもったいないです。彼にはもっと大きな仕事をまかせましょう」ということです。
この逆で、
「彼にその仕事をまかせるのは無理です」ということをいうときは、役不足の対義語を使います。
- 彼では力不足で失敗するかもしれません。
- 彼の実力不足が事業の足を引っ張るでしょう。
- その仕事は彼には荷が重いです。
- リーダーの役は彼には大役すぎます。
- 彼には分不相応の役目です。
もっといい例もあるでしょうが、思いつくのはこれくらいです。
役不足の類語
- 簡単
- 朝飯前
- 楽勝
- 不満足
- 物足りない
- 不服
などが類語になります。
類語とは、
意味の似かよった語です。
「教師と先生」「駐車と停車」なんかも類語ですね。
「その仕事は彼には役不足ですよ」は、
類語を使うとこんないい方になります。
- その仕事、彼にとっては簡単すぎますよ。
- そんな仕事は彼なら朝飯前ですよ。
- そんな仕事、彼なら楽勝ですよ。
- その仕事、彼には不満足で物足りないですよ。
- その程度の仕事をまかされて彼は不服でしょう。
役不足の間違った使い方
「役不足」ということばは、
与えられる役目や仕事が、その人の力量からすれば軽すぎることをいうことばです。
第三者が当人の役目や仕事を評価するときに使うため、人の能力や仕事の軽重などに関わる文脈でのみ使われるべきです。
自分の能力を評する文脈で使うことばではありません。
「私では役不足ですが、精一杯がんばります」
こんなのはハナから使い方が間違っているんです。
ビジネスマナーとして自分を謙遜したいなら、役不足の対義語を使うべきです。
「私では力不足だとは思いますが、精一杯がんばります。」です。
役不足は誤解されやすいことば
自分の力量を評する文脈で、役不足を使うのは論外ですが、
第三者として、人の能力や仕事の軽重などを評価する文脈でで使う場合も注意が必要です。
加藤さんは、ある目的のために構成されたプロジェクトのメンバーに入れませんでした。
どうしても参加したかった加藤さんは、直属の上司にかけ合います。
「部長、私をプロジェクトチームに入れてもらえないでしょうか」
「なにいってるんだ、あの仕事は君には役不足だからダメだよ。」
そういわれた加藤さんは、考え込んでしまいました。
「部長はどちらのつもりでいったんだろう?・・・」
よくあるシチュエーションですが、
このやり取りは、当人たちの「役不足」の理解度によって正反対の意味を持つことになるからヤッカイなんです。
部長も加藤さんも正しく理解している場合
加藤さんにとっては、自分の能力を高く評価してもらえているということですから喜ぶべきことです。
いずれ、もっとやりがいのある大きな仕事をまかせられることも期待できます。
「そんなふうにいってもらえてありがとうございます。」と感謝を述べるところでもありますね。
部長も加藤さんも理解していない
部長の判断は、「君の力では無理だよ」です。
「そうですか、もっと実力をつけるようにがんばります。」
加藤さんは、引き下がるしかありませんね。
加藤さんが理解していない場合
「自分の能力ではメンバーの仕事はできないと判断されたんだ」とがっかりするでしょう。
でもがっかりした態度は、部長にいらぬ不安を与えますよ。
「なんだ加藤くんは、ここは喜んでもいいところだろうになんでガッカリするんだ。ひょっとして役不足の意味を知らないのか?これからのことは慎重に考えないといけないな」
これでは部長の覚えも悪くなります。
部長が理解していない場合
加藤さん、ぬか喜びしてもダメですよ。
部長の思いが、「ちょっと君の実力では他のメンバーについていけないだろうし、足を引っ張るようなことがあっては困るからね」だとしたらどうしますか。
役不足は使わないほうがよい
役不足を使った会話が成立するには、おたがいが正しく役不足の意味を理解している必要がありますし、理解していることを互いに知っていることが必要です。
腹の中で「役不足の意味知っているんだろうな」、と思いながら話していてはコミュニケーションなど成立しません。
誤解を招きやすいことばは使わないほうがよいのです。
「部長、私をプロジェクトチームに入れてもらえないでしょうか」
「なにいってるんだ、あの仕事は君には軽すぎるからダメだよ。君にさせるほどの仕事じゃないよ」
こういわれれば、誤解なんて生まれませんよね。
役不足についての世論調査
平成18年度の「国語に関する世論調査」では、
「本人の力量に対して役目が軽すぎること」と答えた人が40.4%
「本人の力量に対して役目が重すぎること」と答えた人が50.3%
です。
半数以上の人が間違えているという事実があります。
まとめ
以上、簡単ですが甚太郎が解説しました。
「人様に解説するなんて、甚太郎では役不足だね。」なんて聞こえてきそうですが、
本当に、「そんな解説なんて甚太郎には朝飯前、簡単すぎるだろう」と思ってくれているんですか。
本当は、
「解説者の役なんて、甚太郎には分不相応、荷が重すぎて大役すぎるよ。もともと力不足なんだからやめておけ」といいたかったんじゃないですか。
「役不足」は誤解を招きやすいことばなんですね。
実際に、平成18年度の「国語に関する世論調査」では50.3%の人が意味を取り違えています。
わかりやすいコミュニケーションをはかるためにも、役不足の対義語や類語を活用することおすすめします。
役不足の対義語
- 力不足
- 実力不足
- 能力不足
- 荷が重い
- 大役すぎる
- 分不相応
役不足の類語
- 簡単
- 朝飯前
- 楽勝
- 不満足
- 物足りない
- 不服
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